はじめに糖尿病は肥満の蔓延と人口老年化により00年代には80年代と比較し1/3以上増加している。 国際糖尿病連合によると、世界的な糖尿病患者は2025年までには1.94億人から3.33億人まで増加することが予想される。 食品・サプリメントメーカーは発病を遅らせるための方法を必死で見出そうとしている。 このような状況の中、希望あふれる商材がピクノジェノールである。 ピクノジェノールはカテキン、タクシフォリン、プロシアニジンヤフユノール酸といったフェノール成分の濃縮から成るフランス海岸枚樹皮の標準化抽出物である。 ピクノジェノールはサプリメントとして世界中で使われており、糖尿病患者向けに様々な効能を発揮している。 広く文献化された、ラジカルスカベンジャー機能と抗酸化酵素の合成促進能力は糖尿病における酸化ストレスの減少ド寄与する。 動物実験によると、ピクノジェノールにはグルコースを低下させる効果のあることが判明した(Mar-itimら、2003)。 同時に血液中に抗酸化酵素が大量に発見された(Martimら、2003)。 その抗酸化力の発揮はヒト試験においても確認された。 ピクノジェノールの投与は活性酸素を不活発にするため、血液の活動を促進する(Devarajら、2002)。 糖尿病患者は脂質代謝が阻害されることで、アテローム性動脈硬化にかかる可能性が高い。 ピクノジェノールは悪玉コレステロールであるLDLを低下させ、善玉コレステロールであるHDL(Devarajら、2002 Trebatickyら、202 Kochら、2002)を増加させることでアテ ローム性動脈硬化にかかる危険性を低下させる。 糖尿病患者は血栓症にかかる危険性が高い。 ピクノジェノールが血小板の凝集(Putterd'、1999 Wangら、1999)と血栓の形成(Belcaroら、2004)を防止することは糖尿病患者に重要な便益をもたらす。 これらの潜在的な防御的効果の他に、ピクノジェノールは糖尿病性網膜症に有効であることがわかっている(Schonlauら、2002)。 患者への問診により、ピクノジェノール投与後にインシュリンの処置が必要ないことは、ピクノジェノールがグルコースを低下させる効果があるか否かの臨床研究を開始させる理由づけを与えてくれる。 臨床調査は適正投与量の発見を目的にしており、ピクノジェノールの投与量として既に使われている、50~300mgの投与量範囲で試験されている。 1・調査概要と方法研究はオープン形式で、用量設定マルチセンター試験法がとられた。 ガンナメン病院の倫理委兵舎はその研究を承認し、患者からは同意書を提出してもらった。 ガンナメン病院と市立歯科医院の医者を通じて外来患者の中から合計男性18人と女性12人が選ばれた。 患者は年齢28歳~64歳、平均肥満度(BMI)22~34kg/m2の範囲に絞られた。 食後の空腹時血梁グルコースが7~10mmol/Lでスポーツプログラムに1カ月参加している場合はⅡ塾糖尿病患者も調査に含まれた。 除外された基盤はⅠ型糖尿病、明白なあるいは悪性の高血圧と継続的な薬の治療が必要な疾患である。 妊娠中または泌乳中の女性も除外された。 研究はヘルシンキ宣言に合致する形で行われた。 全ての被験者は開始前に1カ月間の処方とスポーツプログラムへの参加を義務づけられた。 最初と最後の診察の間、身体検査および、医学的歴史、体重、バイタルサイン、血圧、心電図、食事療法と薬物療法のデモグラフィツクな評価が実施された。 空腹時の血中グルコース、HbA1c、インシュリンとエンドセリン-1のサンプルが探られた。 朝食後2時間経過後血糖値を測定するため血液サンプルが採られた。 グルコースは酵素を用い、HbAIcは高速液体クロマトグラフィー、そしてインシュリンとエンドセリン-1は免疫学的検定により測定された。 Fisher投影の有意差テストによる分散分析(ANOVA)を用いたSPSS16.0ソフトにより、統計分析が行われた。 患者は3週間の間隔でそれぞれ50・100・200と300mgのピタノジュノールを投与された。 3週間毎に空腹時と食後のグルコース・エンドセリン-1・HbAIc・インシュリンが分析された。 2・結果12週間中にバイタルサイン、心電図あるいは血圧に変化はなかった。 空腹時の血糖値は、200mgのどクノジュノールを投与するまで用量依存的に減少した。 投与量を200mgから300mgに増やしても血糖値はそれ以上減少しなかった。 基線に比べて100~300mgのピクノジュノールは8.64±0.93から7.54±1.64mmol/L(pd<0.05)まで空腹時のグルコースを大きく減少させた。 50mgのピクノジェノール投与で12.47±1.06から11.16±2.11mmol/L(p<0.05)まで食後のグルコースが著しく減少した。 食後のグルコース減少の最大値は200mg投与により10.07士2.69mmol/Lまで減少することが観察された。 300mg投与してもより強力な効果は現れなかった。 HbAIcのレベルは8.02±1.04から7.37±1.09%まで継続的に減少した。 基準との相違は200mgまたは300mgのピクノジェノール投与により処方9週間後と12週間後に顕著に現れた。 エンドセリン-1は100mg~300mgのピクノジェノール投与後に104±16から91±15pg/ml(p<0.05)まで著しく減少した。 300mgの投与でもそれ以上の減少は見られなかった。 インシュリン量はピクノジュノールのどの投与量に対しても変化がなかった。 4人の患者がめまいを訴え、2人が頭痛、2人が胃の不調、そして1人が口内炎を訴えたが、中断した被験者はいなかった。 これらの症状は、軽微で一時的なものであった。 3・討議 インシュリンの分泌は無関係であったので、インシュリン分泌の刺激はグルコース量を減らす要因としては除外された。 ピタノジュノールのグルコースを低下させるメカニズムを解明するために力学的な調査が進行中である。 エンドセリン-1の減少は糖尿病患者にとって重要な発見である。 エンドセリン.1は血管収縮と変異原性潜在力があるため、血圧の持続的上昇をもたらす(Hopfnerら、1999)。 糖尿病タイプⅡに関連したインシュリン抵抗性とインシュリン分泌障害はエンドセリン-1の放出を高め、血管拡張と収縮要因の間のアンバランスをもたらす(Matherら、2001)。 よって、ピクノジュノール投与後に観察されるエンドセリン-1の減少は内皮細胞の機能改善の兆候と見られる。 4・結論 代謝管理の可能性を得るためのⅡ型糖尿病患者(重度を除く)に対する用量設定の研究は、更なる生理学的な臨床研究が必要とされる。 この結果はDiabetesCare,Volume27,Number3,Manch 2004に掲載されている。 参考文献1)MaritlmA,DeneBA,SanderRA,WatkinsHIJB:Effcts o fPycnogenol R Treatmenton OxidativeStressinStreptozotocin-InducedDiabeticRats・J BiochemMoleculer Toxicology 17(3),193-199(2003) 2)DevaraJS,Kaul N,Sch6nlauF,RohdewaldP,JialalI:Supplementation with apinebarkextractrichinpobrpheno Isincreasesplasmaantioxldant CapaCityanda ltersplasma poprotein profile.LiPids 37(10),931-934(2002) 3)TrebatickyB,NovotnyV,BrezaJ,ZitnanovaI,DurackovaZ:Anti-lipemic activity of extract from Pinusmaritima(Pycnogenolq)inpatientssufferingfromerectiledysfuncdon-apilot study.XXI Int'l Conferencon PolyphenoIs,Marrakech-Morocco,Sept9-12,191-192(2002) 4)KochR:CDmParadveStudyofVenostasin R and Pyc-nogenolR inChronic Venous Insufficiency.PhytotherRes 16,1-5(2002) 5)PtutterM,GrotemeyerKHM,WirthweinG,Araghi-NicknamM,WatsonRR,HosseiniS,RohdewaldP:InhibitlOnOfsmokingMinducedplateletaggregationbyaspir and Pycnojenol.Thrombosis Research,95,155161(1999) 6)WangS,TanD,ZhaoY,GaoG,GaoX,HtlL:TneeffctofPycnogenolRonthemicrocirculation・plateletfunctionandischemicmyocardiuminpatientswithcoronary artery diseases.Eur Bul Drug Res 7(2),19-25(1999) 7)BelcaroG,CesaroneMR,RohdewaldP,RicciA,ippolltOE,Dugal1M,GrifhM,RufhiLAcerbiG,Vin-ciguerraMG,BaveraP,DiRenzoA,ErrichiBMandCerritelliF:PreventionofVenousThrombosis andThrombophlebitisinLong-HaulFlightswithPyc-nogenolR.Clin Appl Thrombosis/Hemostasis 10(4), 373-377(2004) 8)Sch6nlauF,RohdewaldP:PycnogenolRfordiabeticretinopathy.Int.Ophthalmology 24,161-171(2002) 9)HopfnerRL,GopalakrlSlmanV:Endothelin・emerg-ingroleindiabeticvascularcomplicadons・Diabeiohgia 42,1383-1394(1999) 10)MatherK,AndersonTJ,VermaS:Insulin Action inthe Vasculature:PhysiologyandPathophysiology・JVasc Rez38,415-422(2001)
現代社会において、高コレステロール値がアテローム性動脈硬化(症)の深刻な危険因子の1つであることは、周知の事実である。 しかし、高コレステロール値が認められる場合には、詳細にコレステロール値を分析する必要がある。 なぜなら、高LDLコレステロール値のみが、深刻な危険因子であると考えられているからである。 酸化LDLコレステロールは、血管壁に粘着する。 多量のLDLは、血管内における脂肪沈着形成の可能性を高めるため、LDLは「悪玉」コレステロールとされている。 一方、HDLコレステロールは、コレステロールを血管およびその他の細胞から除去し、排出のために肝臓に運ぶ。 血中の高HDL濃度は、心血管系疾患のリスク減と関連するため、HDLは「善玉」コレステロールと呼ばれている。 それゆえ、総コレステロール値のほかに、「悪玉」コレステロールと「善玉」コレステロールの均衡は、心血管系疾患リスクの予測因子なのである。 コレステロール値を下げるのに有効な薬は、数多くある。 しかし、これらの薬には副作用があるので、コレステロール値を緩やかだが減少させ、副作用のあまりない栄養補助食品は、価値のある代替物といえる。 いくつかの臨床試験において、ピクノジェノールの摂取は、総コレステロール値を下げるだけでなく、「善玉」HDLを増やし、「悪玉」LDLを減らす追加効果があることが示されている。
慢性的静脈不全(ChronicVenouslnsuthciency)にかかると、毛細管庄が上がるため、静脈性高血圧症(Venous Hypertensive Angiopathy)と呼ばれる局所的微小循環障害にかかりやすくなる。 この静脆性高血圧症は、皮膚細胞の栄養不良や酸化を引き起こす。 局所的に妨げられた微小循環の結果として起こる組織の低かん流により、細胞への酸素供給は不十分となり、最終的に細胞は死んでしまう。 この皮膚細胞の壊死の過程において、潰瘍が発生し、下肢部から皮膚がはがれ、保護されなくなった組織は感染し、その患者は極度に治癒しにくく、むき出しで無防備な組織は傷つき、いわゆる‘むき出しの足’という状態になる。 ピクノジェノールは、慢性的静脈不全の兆候(Petrassiら 2000、Arcangeil 2000、Koch2002、Ric-cioniら 2004)および長時間フライト中の静脈にかかる高圧力により起こる浮腫形成(Belcaroら2004)を抑制する効果がある事が認められているため、今回、実際に慢性的静脈不全および下肢部の潰瘍形成にかかっている患者達を対象に臨床研究が行われた。
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